きらり看護


~ 事例から学び 看護観を高める ~
健和会では患者に寄り添う看護を大切にしています。その中の1つとして「手を用いたケア」があります。
意識的に「手」を用いたケアを通し、そっと手に触れながらその手をさすりつつ会話をしたり・・・ そんな日常の看護をご紹介していきます。

柳原リハ3階(障がい者)病棟
その人の思いと
その人らしくを
支える看護
~外出する その可能性を多職種で追求する~
尿管癌で入院中の90歳代のDさん。自己導尿を試みたものの、年齢的にも手技や手順の自立は難しい状況でした。Dさん自身は十分納得できずにいましたが、自力での排尿が難しいことから持続カテーテルを挿入せざるを得ませんでした。カテーテルを挿入すると排尿量も確保され、体調も改善して退院に向けての調整が始まりました。しかし、Dさんからは日々何度も「これ(袋)を付けたままだと外に出られない。外出は諦める。」との言葉が聞かれ、「こんな恥ずかしいものがあるから食堂でご飯は食べない」と、病室から外に出ることにも抵抗を感じていたのです。
DIBキャップ(バッグを外しカテーテルの栓をすること)の使用を提案しましたが、自分では着脱が難しく習得はできませんでした。
どうしたらカテーテルを入れたまま在宅に戻り、外出する気持ちになれるのだろうか?ご家族、主治医・セラピストやMSWを含めた多職種面談を実施しました。ウロバックを入れる袋の工夫やウロバックのサイズを変更するなどアイデアが出されました。いくつかの提案されたアイデアの中から、Dさん自身が選択したのが、肩掛け式のポシェットタイプのウロバック入れです。ポシェットを斜め掛けにした姿はウロバックが入っているとは思えないくらい自然でした。それ以来、「これならいいな」とポシェットを提げて食堂で食事を摂られています。
多職種での話し合いにより可能性や視点の幅が広がって、患者さんの尊厳を守り、在宅での生活やQOLの維持につながることを改めて感じられました。
きっと退院後のDさんは、ポシェットを提げて外出してくれることでしょう。

柳原病院 4階病棟
口から食べるという支援
~「食べない」ことの裏側にある患者の思いや、
取り組みの大切さ~
Fさんには脳血管疾患があり、高齢で誤嚥の心配もあったことから、入院後の食事はお粥とペースト食が提供されていました。
入院から数日後、看護師2年目になったばかりの私は夜勤の際にFさんを受け持ちました。朝食時、お粥は全部食べているのにペーストのおかずにはまったく手を付けていません。カルテを確認すると、お粥だけが全量摂取との記録が残されていました。お粥は食べられるのにほかのものは食べていないのはなぜ??
看護をするときには病気や症状だけでなく、その方の生活や暮らしを把握することが大切…と日々教わっています。カルテでデータベースを開き、ご自宅での状況を改めて確認すると、Fさんはペーストではなく柔らかい食事を食べていたことがわかりました。早速、先輩看護師や主治医に相談して食形態を変更し、注意しながら提供してみると、Fさんはおかずにも自分から箸をつけ、むせることなく全量摂取できたのです。
ペースト状のおかずは、Fさんのそれまでの生活の中にはないもので、おかずと認識できなかったのかもしれません。何とか口から食べてもらいたい思いが私たちにはあります。「いらない」と言う患者さんの裏側に何があるのか考えることが大切だと考えます。そして安全を確保してトライすることが闘病意欲につながることもあります。ただ口にすればよい食事ではなく、目で食べるとも言われますが、盛り付けや 見た目も含め、食べることを大切にした看護を提供していきたいです。

柳原腎クリニック
ともに闘病する透析看護
~人工透析を通して
患者さんとの日々の関わり~
Eさんは、70代男性 慢性腎不全の患者さんでした。いよいよ透析を導入しないといけない状態となり、とても暗い表情での透析開始となりました。透析中の会話も最低限の受け答えのみで、心を閉ざしてしまったかのような状況が続いていました。この治療環境の変化への患者さんの戸惑いや気持ちを理解し、その思いに寄り添いながら対応しようと日々関わっていたところ、いつからか少しずつ会話での明るさも増し、お孫さんのお話など沢山してくれるようになりました。
そんなEさんは透析を始めて5年の月日を当院で過ごす中で、在宅酸素が開始となり、酸素を携帯しながらの通院にもなりました。最後まで在宅での療養を望まれていましたが、入院され約5か月の闘病期間を送った後に逝去されました。
ある日ご家族が「父が(透析中は)良くしてくださったと言っていました。ありがとうございました。」とお礼の言葉を届けに来てくれました。
透析患者さんの看護では、お互いに長い付き合いになる中で、心の距離がとても難しいと感じる時がありますが、Eさんとの透析導入から最後までの関わりも忘れられない大切な思い出となりました。透析を受ける患者さんにとってスタッフの支えは大切あり、時間がかかってもいつか心を開いてもらえる、一緒に闘病していくという関わりをこれからも続けていくことが大切だと感じました。

みさと健和病院 緩和ケア病棟
入院していても家族と共に過ごす誕生日
右肺癌で入院中の患者 Aさん。痛みに関しては麻薬を使用してコントロールをしている方でした。
入院してから徐々に認知機能が低下し、表情も乏しくなり、声かけしても動作ができにくくなってきていたことに娘さんも気になりながら面会をしていました。
その日はAさん88歳のお誕生日。
娘さんやご家族がご本人の好きな海鮮丼やケーキを持参し病室でお祝いをしていました。そこにはAさんの今まで見たことのない満面の笑みがありました。
ご家族と一緒に迎えた誕生日は、たとえ場所が病院であっても、とてもよい時間となっていたように思います。そんな大切な時間に看護師としてご一緒出来て本当に嬉しかったです。

みさと健和病院 急性期病棟
患者さんが大切にしていることを
尊重した看護
90代Bさん。入院した当初は環境の変化による戸惑いから感情的になる場面もみられました。
血圧測定時には「これは何だ」「何のために行うのか」と説明を聞いて納得してからでないと応じないことや、薬は必ず食後30分後と決めて服用することなど、ご本人がこだわって大切にしている習慣がいくつかありました。
そのため、看護ケアを実施する際にも事前に目的や手順を説明し、安心して受け入れて頂けるような関わりを大切にしていました。また、可能な範囲で入院前の生活習慣に沿えるように様々な調整をしました。Bさんが大切にしていることをできるだけ継続することで、徐々に落ち着いて看護ケアを受けて頂けるようになりました。
この関わりを通して、患者さんにとって大切な生活習慣や価値観をできるだけ尊重し、その人らしさを支えるために一人ひとりに合わせた看護を考えることの重要性を実感しました。

みさと健和病院 地域包括ケア病棟
生活リズムを整えることの大切さ
90代Cさん。日常生活は介助が必要であり、口からの栄養摂取不良のため経管栄養チューブを留置していました。
どうしてもベッド上で過ごす事が多く昼夜逆転傾向もあることから 日中の離床を促し、1日の活動量増加と経口摂取量の増加を計画しました。リエゾン介入による眠剤など内服調整も行い、看護師も昼間起きていられるように関わって、生活リズムが少しずつ整っていきました。
すると、これに伴い食べられる量が徐々に増え、経管栄養チューブを抜去できるまでになったのです。
高齢患者においては生活リズムを整え、日中の活動性を高めることが、身体機能や摂食状況の改善につながる重要な要素であることをCさんから学びました。
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